イヴの総て2007/01/07 04:26

イヴの総て
イヴの総て
All About Eve(1950,米)

マーゴ(ベティ・デイヴィス)は、40歳になる大女優。その立ち振る舞いは我儘・自由奔放でまさに大女優そのもの。演出家のビル(ゲイリー・メリル)とは恋人同士。

イヴ(アン・バクスター)は、ウィスコンシンの田舎で生まれ育ち、幼い頃から演劇が大好き。イヴは、マーゴの大ファンで、猛烈に憧れている。

アディスン(ジョージ・サンダース)は、演劇会の批評家。

劇作家のロイド(ヒュー・マーロウ)とその妻カレン(セレステ・ホルム)。
物語は、セーラ・シドンス賞の授賞式から始まる。アディスンがナレーション的に語る。その華やかな雰囲気の中、不敵に映るマーゴ、カレン、ロイド、ビル。カレンの回想で、この授賞式までのお話がつづられる。

イヴが大女優マーゴに憧れ、演劇の世界に踏み込み、トップスターへと這い上がっていく。そこでイヴがマーゴ、ビル、ロイド、カレンそしてアディスンと絡み合う。(あらすじはこちらで)

演劇(芸能)界での、駆け引き。女優そして女。僕は、マーゴの演技が好きだ。大女優という華やかさと老いの不安というものの間での葛藤がすごく演じきられている。

イヴ、カレン、マーゴを通して、女性が表現されている。タイトルの「イヴ」という名前を与え、そこに『女』の生き方を凝縮させたのかな。誰もが輝きたいという想いを一番華やかに映す職業が女優のように思えるし。

カレンとマーゴがガス欠の車の中で交わす言葉は重みがある。
The things you drop on your way up so you can move faster. You forget you'll need them again when you get back to being a woman.

女性に限ったことではないが、社会で求められる役割を演じる前に、人は1人の人間で、それ以上でもそれ以下でもない。そしてその事に気付くには幸か不幸か時間を要するのだろう。演じている時はその役の良し悪しの判断は付けやすいのかな。何かしらの判断基準があるから。

そして最後のシーン。フィービー。鏡の中に無数に映るその姿が華やかさと刹那さを感じさせる。

日本的もしくは仏教的な感覚だと無常観かな。
「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす おごれる者久しからず ただ春の夜の夢の如し 猛き人もつひには滅びぬ ひとへにただ風の前の塵に同じ」

第23回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、脚本賞、録音賞、衣装デザイン賞、そしてアディスン役のジョージ・サンダースが助演男優賞を受賞。

監督: Joseph L. Mankiewicz
脚本:Joseph L. Mankiewicz
出演:Bette Davis、Anne Baxter、George Sanders、Celeste Holm、Gary Merrill、Hugh Marlowe