日本の表現力2007/01/25 00:32

The Power of Expression, JAPAN
文化庁メディア芸術祭10周年記念企画展 日本の表現力

展示は3部構成。メディア芸術の歩みとして「日本のメディア芸術1950-2006」「表現の源流」。そして、メディア芸術の未来として「未来への可能性」

会場に入るとまずは「表現の源流」。様々な切り口から日本の伝統的文化作品を展示している。僕が面白いと思ったのは、写し絵。オランダから伝わった幻灯機をヒントに、三笑亭都楽が桐材に2枚のレンズを入れて幻灯の箱を作り、"江戸写し絵"という演芸を作り出したらしい。ちなみに関西では、"錦影絵"と呼ぶみたい。
(参考)
メディア芸術美術館 第二回企画展 写し絵
劇団 みんわ座

次が「日本のメディア芸術1950-2006」。ここでは、1950年代から現在までのアート、エンターテイメント、アニメーション、マンガの軌跡が10年毎に紹介されている。
エンターテイメントとしては、その年代に流行ったテレビCMが見れたり、ゲームなんかが展示されてりしてる。実際に遊べたりもします。ゴジラの着ぐるみもすごく近くでみれて感激!
アートのところで面白かったのが、ビデオアートの先駆者として知られるナムジュン・パイク氏が製作したロボット"K-456"。この《K-456》君、1982年NYのホイットニー美術館の個展でのパフォーマンス中に自動車事故に...史上初のロボットの自己犠牲者ということだ...ロボットも増えてくると未来の世界では事故も増えるのだろうか。

そして最後が、「未来への可能性」。この展示もすごいボリュームでインタラクティブなインスタレーションが多くすごく楽しめた。もちろん、全部は紹介できないんですが、だらだらとリストアップ。

《クイーン・マンマ》ヤノベケンジ三宅一生
これって更衣室なんですよね~。ここで着替えると生まれ変わって出てくる感じなんでしょうかね。

《streetscape》(中居伊織)
ヘッドフォンを付け、地図上の溝をペンでなぞると実際の街の音が聞こえてくる。音だけで感じる街は、そこに住む人や生活なんかいろんなものを想像させてくれる。

《KAGE 2007》minim++
円錐形のオブジェクトがたくさん置いてあり、光が当たり影が生まれる。円錐の先端に触れると影が様々に変化する。影は実体が存在する証でありつつも影は実体ではない。影によって生み出される実体のない世界って無限の可能性を感じる。光はやはり偉大なのだ。

《凹凸ジェモーションスクリーン》河口洋一郎
CGと併せて画面が盛り上がる。映像もそうだけど、そこに立体感が生まれより映像が生きているように見える。"Gene"と"Emotion"を組み合わせた"Gemotion"。凹凸スクリーンの他に、スクリーン前の人の動きに併せて背景のCGが水の波紋のように変化する展示も面白かった。

《Flipbook》
Web上でパラパラ漫画を作って、共有することが出来る。今はここで、ユーザー登録して使えます。

《hanabi》nendo
形状記憶合金を使った照明。明かりがつくと花が開き、消えると閉じる。こんな照明が家にあるといいな。

《Tablescape plus》筧康明・苗村健・松下光範
専用のテーブル型ディスプレイにL字型のフリップを置くと、キャラクターが投影される。フリップを近づけると(キャラクターが近づくと)話し出したりする。森に入ると...この仕組みはどうなってるんだろう???

《Lake Awareness》森脇裕之
青い光が幻想的。中に入って下さい。そして光に触れてみてください。

《GLOBAL BEARING》平川紀道
巨大スクリーンには、外から見た地球。スクリーンの前には一本の棒=コントローラー。これを操作することで、地球を自由自在に動き回ることができる。

《1000 DeathClock in Paris》宮島達男立花ハジメ
オンライン参加型の作品。参加者は、名前、生年月日、何年何月何日まで生きたいか?を入力。生きてきた時間と死までのカウントダウンを1/10秒単位で行う。

《FragMental Storm》ニキソニモ
入力したキーワードでインターネットを検索し、見つかった複数のサイトを絵や文字をランダムに表示する。

などなど、ほんとにたくさんの作品が。

土偶という縄文時代の作品から現代アートまでを見れて、その中に何か通じるものがあるのを感じた。いつの時代にも文化は存在し、その時代に生きる人の生活「=生きる」ってのがアートには映し出されているようだ。
今は様々な技術が発達し、表現方法は豊かになってきた。でも、そこに映し出されるものは何故か虚無感というか空虚感というか哀しみを感じさせるものが多いような気がする。時代にまじめに向き合うことが"辛さ"から、いつか人の持っている本当は優しい心に触れ合う幸せに変わっていくように、僕も表現力を磨こうと思うのであった。

そうそう、これだけのものが無料で見られるんです!是非足を運ぶ価値有りです。

会   期: 2007年1月21日(日)~2月4日(日)【入場無料】
会   場: 国立新美術館
主   催: 文化庁メディア芸術祭実行委員会(文化庁・CG-ARTS協会)、国立新美術館