子宮の記憶2007/01/15 22:20

子宮の記憶
子宮の記憶 ここにあなたがいるシネスイッチ銀座で見てきた。

真人(柄本佑)は、裕福な家庭に生まれ、両親と3人暮らしの17歳の高校生。家族の、母親の愛情に飢えた少年。
愛子(松雪泰子)は、今の夫(寺島進)とは再婚で、義理の娘(野村佑香)と3人家族。他人に心を開くことが苦手。

真人は、新生児の時に愛子に誘拐されていた...真人は、誘拐されたときに愛子がつけた名前<良介>を名乗り、愛子の食堂を訪れ、住み込みでバイトを始める。血のつながりのない二人に生まれるものは?

親子とは、愛情とは何かを考えさせられる映画だった。

映画のパンフレットに精神科医・名越康文氏が解説で、"孕むはずだった"子宮の記憶=出産よりも原初的、古代からの女性、人間そのものの記憶を表していると記している。

難しいんだけど、真人は記憶の中に愛子の存在が刷り込まれていたのだろうか。実際、自分の親(と思っている人)から自分が本当に生まれたのかは自分では分からない。「生みの親より育ての親」という単純なものではないんだろうが。

物語の中で起こる真人と友人・沙代(中村映里子)が起こす事件がきっかけとなり物語は展開する。沙代は妊娠してしまい、真人に相談する。二人は流れのままに関係を持つ。
沙代は東京に戻ると真人に告げ分かれるが、沙代は海で遺体となって発見される。(沙代が真人に最後に「ありがとう」という言葉を残すシーン。すごく沙代の表情が美しかった。)

たまたま前日に愛の流刑地を見てたからかな。愛と自殺ということを考えた。愛がないと自殺してしまうのかなって。沙代はきっと真人と同じで、愛に飢え、愛を求めたのだろう。でも、得たものは愛でもなんでもなく、刹那の安らぎ?のようなもの。それしか自分にはないと思うと、死んでしまいたくなるよね。辛いもん。

記憶を辿って生まれるもの。僕は、絆(きずな)ってモノかなって感じた。良く言えば絆という綱で繋がった関係。悪く言えば、縛られた関係。けど、それには意味があるんだ。生きている限り。

あ、最後に僕が好きなシーンを。スナックで、酔いつぶれた愛子に真人が「傷つきやすいんですか?(多分...)」と言葉を掛けた後に、愛子が真人の手を引いて踊るシーン。なんか妙に頭に焼きつく演技だったな~。

子宮の記憶

原作:藤田 宜永 子宮の記憶 <ここにあなたがいる>(講談社刊)
監督:若松 節朗
脚本:神山 由美子
出演:松雪 泰子、柄本 佑、野村 佑香、寺島 進ほか
音楽監督:S.E.N.S. (メインテーマ「Way Out」)