恋愛小説家2007/01/06 22:33

恋愛小説家
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As Good As It Gets(1997,米)

ユドール(ジャック・ニコルソン)は、人気の恋愛小説家。しかし、最初のシーンから完璧に表現されている、超個性の強い毒舌家。極度の強迫神経症でドアの鍵を1・2・3・4・5!と5回のチェックを欠かさず閉め、継ぎ目を踏むことができない。

これに対してキャロル(ヘレン・ハント)はマンハッタンのカフェのウェイトレス。彼女は、喘息の息子スペンサーいやスペンスをいつも気にかけ、その看護で疲れきっているのだが、明るく気さく、大雑把な感じ。

サイモン( グレッグ・キニア)は人気の画家。ユドールと同じアパートの隣の部屋に住んでいる。美しい顔立ちでゲイ。暗い過去を背負い、家族との断絶状態にある彼。

そしてバーデル。サイモンの飼っている愛犬。

ユドールとキャロルの恋愛ストーリー。(あらすじはこちらで)

ユドールの心の変化が面白い。心情が、バーデル、サイモンとの関係、ドアの鍵、そして最後のシーンでもある道路の継ぎ目で表されている。

ユドールは、本当は優しい人なのである。ただ上手くそれを話し言葉にできない。小説には書けるんだろうけど。けど最初のシーンでもあった、彼のトラウマなのか「Love was...」で詰まってしまうもの。これが彼の精神上の囲いを生み出しているものかもしれない。純心であるが故に世の汚れた部分が目に付き、人を愛することから逃れているのかな。
物語では明かされなかったが、彼がどんな生い立ちなのか気になる所だ。

キャロルは、開放的に映る。けれども、自分の心の穴に気付いていて、それを埋めるように忙しさに身を委ねる。根本的にはユドールに似ていると思う。分かっていても正直に行動できない点なんかがね。表面上の強さ・明るさと誰にも見せる事のない彼女の心が魅力を感じさせる。

そして登場人物の交わす台詞運びがコメディタッチで面白い。この台詞はコメディではないんだけど、サイモンがモデルのヴィンセントに話した言葉。これが結構好き。
"If you look at somebody long enough, you discover their humanity."
あと、キャロルがユドールに対して普通のボーイフレンドが欲しいと言っていた時に、キャロルのお母さんが言った言葉。
"Everybody wants that, dear. It doesn't exist."

人はどうして好きな人に好きと言えないのだろう。(言える人もいるんだろうけど。)けど、言わなきゃいけない時に、言うべき言葉も分かっているのに言えないのは...傷つきたくないから?こんなに愛しているのにね。

第70回アカデミー賞で、ジャック・ニコルソンが主演男優賞、ヘレン・ハントが主演女優賞を受賞した作品だけあって、人物が出来上がっていて、見てて安心。あっという間に時間が過ぎた。

監督:James L. Brooks
原案:Mark Andrus
脚本:James L. Brooks、Mark Andrus
出演:Jack Nicholson、Helen Hunt、Greg Kinnear