スーパーエッシャー展 ある特異な版画家の軌跡2006/12/16 22:00

スーパーエッシャー展
Bunkamura ザ・ミュージアムで開催されているスーパーエッシャー展

初日(11月11日)に行ってきたんだけど、記事にしていなかった...上手くまとめようと思うとなかなか書けず、かといっていつまでたっても上手く纏まる訳でもなく。という訳で、残りわずか、来年1月13日までとなったスーパーエッシャー展のご紹介。

オランダの版画家M.C.エッシャー(1898-1972年)の作品からハーグ市立美術館所蔵の約160点の作品と、様々な資料からなる総計約180点のエッシャーの作品が展示されています。

入り口でニンテンドーDSを貸してくれ、DSでの作品紹介、音声案内というのは結構斬新で良かったかな。けど、気付くとDSを見てるのか作品を見てるのか分からなくなる時が...

エッシャーの作品の特徴で目を惹くのが、やはり「平面の正則分割」を駆使した表現技法。超有名な「昼と夜(Day and Night, 1938)」や、極限シリーズ。僕は、「円の極限Ⅳ 天国と地獄(Circle Limit IV Heaven and Hell, 1960)」が好き。円というのは不思議なカタチ。そこに天使と悪魔が交互にでも整然と存在する。人の心のバランスのようなものを感じる。

そしてその空間と対称性の中でエッシャーが作り出した、だまし絵(Optical Illusion)と呼ばれる世界。「上昇と下降(Ascending and Descending, 1960)」「滝(Waterfall, 1961)」は皆さんも一度は見たことがあるのでは?その習作には描きかげる過程が見れてワクワクした。

全体を通して僕の感じたもの、それはエッシャーという人物の物事の捉え方の独創性。

エッシャーのこんな言葉がある。

版画のなかで私は、私たちが美しく秩序のある世界に住んでおり、ときにはそう見えても、決して無形の混沌のなかにすんでいるのではないということを証明しようと努めてきました。

版画という、一見ものすごく制限を受けそうな表現技法だけど、そこにこそ彼の考えの根源があるのではないかと思った。鏡面での表現。それは常に対象を対称として捉え、一見混沌に見える世界に秩序を創り出す。

そして「光」。光の表現。見えているもの(物質=光)。感覚で捉えようとするとそれは物質でなく、見えているものに捕われない何かがそこに見えてくる。人が心で感じた光。それが1人1人の人間が持つ独自の世界観だろう。

今回の作品で僕が一番惹かれたのが、「花火(Fireworks, 1933)」。光と闇、刹那と永遠、点と面、直線と曲線、あらゆる二面性を感じさせてくれた。

エッシャーの表現する作品には、現実ではない世界が広がる。エッシャーの視点から見えた世界をあなたも感じてみて、日常の世界がこんなにも違って見えるという非日常を体験してみてはいかがですか?

会   期: 2006年11月11日(土) ~2007年01月13日(土)
開館時間: 10:00 ~19:00
会   場: Bunkamuraザ・ミュージアム
主   催: Bunkamura、ハーグ市立美術館、日本テレビ放送網、NTVヨーロッパ、読売新聞東京本社
後   援: オランダ王国大使館

コメント

_ Tak ― 2006/12/17 15:13

こんにちは。
TBありがとうございました。

版画家としてのエッシャーを
観ることのできる良い展覧会でした。

_ raccoon ― 2006/12/31 21:09

Takさんコメント&TBありがとうございました。
僕もエッシャーの版画の世界に驚きました。
またいらっしゃってください。

_ ジョヴァンニ・スキアリ ― 2007/01/06 23:13

TBありがとうとうございました。エッシャーはよく知られているので私はあまり内容について書きませんでしたが、貴ブログを読んで新たな世界に触れるような気がしました。

_ raccoon ― 2007/01/07 03:08

ジョヴァンニさん、コメントありがとうございます。
私個人のホント主観での感想ですが、好きを感じたものに少しでも共感して頂けると嬉しいです。ありがとうございます!

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_ 弐代目・青い日記帳 - 2006/12/17 15:12

Bunkamuraザ・ミュージアム開催されている
「スーパーエッシャー展 ある特異な版画家の軌跡」に行って来ました。

「球面鏡のある静物」

先日観てきた横浜美術館の「アイドル!」展もチラシが4種類もあって驚かされましたが、このエッシャー展も負けず劣らず会場入口に同じく4種類ものチラシが置いてありました。更に裏が印刷されていない初期のチラシや割引券が付いているひと回り小さなチラシなど一体どれだけあることやら。。。日テレ&YKK APさんのこの展覧会に対する意気込みの表れでしょうか、それとも「これ!」と一枚に絞りきれないエシャーの才能の多彩さでしょうか。

折角ですから手元にあるチラシの類全てご紹介しながら感想書きますね。

展覧会に行ったのは土曜日の夕方。この日から開催というのに大変な盛況ぶり。エッシャー人気推して知るべしです。展覧会開催に合わせて午後3時より同じ渋谷にある國學院大學で開催された木島俊介氏の美術講演会「M.C.エッシャーの絵画と錯視構造」を聴いてから観に行けたので、「だまし絵面白かった〜」てな感想に終わらず良かった良かった。

「エッシャー」=「だまし絵」というイメージが強いのですが、この展覧会を観ると「だまし絵」ばかりがエッシャーではないことよく分かります。またそこへ行き着く順序もほぼ制作年代順に展示されているので「流れ」が大変掴みやすく構成されています。伊達に「スーパー」と冠かぶせているわけではないようです。

「椅子に座っている自画像」

エッシャーが弱冠二十歳ごろの作品。鏡の上に座りそれに映った自分を版画にしたそうです。この当時から鏡へ関する興味はエッシャーの中で強烈に芽生えていたのでしょう。「鏡」はこの展覧会を観る上での重要なキーワードになります。


エッシャーを理解する為の次なるキーワードは「イタリア」(イタリアという場)及び「イスラム文化」(イスラム紋様)です。

エッシャーに一番大きな影響を与えたのは「イタリア」でした。1922年、初めてのイタリア旅行を皮切りに何度となくイタリアを訪れています。約10年間イタリアで生活までするほど「イタリア」に深く感化されています。この事は今回初めて知りました。

 

イタリアは何故エッシャーにそれほど感銘を与えたのか?それは会場で作品を見ればすぐに答えは出ます。平坦でフラットなオランダで生まれ育ったエッシャーの目には山々をはじめ多くの丘陵地帯の存在するイタリアの風景はまるで別世界を見ているようだったはずです。

更にエッシャーはスペインへも旅行し、そこではイスラム教の文化に深い影響を受けました。右の作品などがそうでしょうか。↓は私がスペインを旅行した際に撮影したセビリアコルドバのメスキータの内部です。(アルバムはこちら)

イタリア同様山々に囲まれた起伏に富んだ国に生まれ育った私にはエッシャーほどイタリアという「場」には感動しませんでしたが、初めて触れた回教の寺院や装飾には大変感銘を受けました。

アルハンブラ宮殿で受けたインスピレーションが後のエッシャーの作品に重要な要素をもたらしたことは、木島俊介氏が美術講演会「M.C.エッシャーの絵画と錯視構造」でもお話されていました。(イスラム紋様から受けた影響)

これはイタリアに居た当時の作品ではありませんが、後世の作品にもこうしてしばしば起伏の激しい見た事もない光景はエッシャーの心の中に強く残ったのでしょう。
「バルコニー」

有名な「昼と夜」に代表される平面の正則分割を生かした作品を生み出したエッシャーですが、最大の理解者でありパトロンでもあった実の父親から「なんだお前は、壁紙でも作っているのか」と当時言われてしまったとか。。。悲しすぎます。凄く努力し計算し作り上げたであろうに。。。


四角形の枠組みから次第に円形の枠組みへと変化していきます。これも講演会で木島氏がお話さえれていましたが、無限性を表現する場合四角より円の方が適していることをエッシャーが自ら見出した結果でしょう。

「天国と地獄」

平面的な作品から立体的な作品へ変化するのはこの後です。父親がもし褒めていたらエッシャーの作品は平面の段階でストップしていたかもしれません。そう考えると「父さん、グッジョブ!」です。

「深み」
この作品の習作も2点展示してありましたが、魚の顔が凄くチャーミング!これ必見かもしれません。流石、ミッフィーちゃんを生んだ国オランダです。また別室に用意されたデジタルコンテンツも必見。この絵を含めた数点をCG化し画面に触れて自由自在に観る方向を変えたりできます。エッシャーが今の時代に生きていたらどんな感想持ったでしょうか。(「メタモルフォーゼ」という作品、ハーグの銀行に用いられているそうです。画像見つけました。こちらです。いいなーこんな銀行)

これから先は「見たことある〜」作品が並びます。エッシャーをエッシャーたらしめている「だまし絵」のような作品のオンパレードです。

そんな見慣れた作品の中で「おおっ!」と思ったのが一点ありました。有名な「滝」という作品です。あり得ない水の流れ方しています。無限に流れ続ける滝です。この作品の赤丸の部分に苔が群生しています。人の大きさと対比するととっても大きな苔です。



この苔の部分だけ描かれた習作が今回展示されています。凄いインパクトです。西芳寺もびっくりの苔苔苔。チラシにだって使われています。

「滝(部分)習作」

それともう一匹?!
「でんぐりでんぐり」



エッシャーは幼い頃から大の昆虫好きだったそうです。今回の展覧会も初期の作品にはトンボ、フンコロガシ、蟻を精密に彫りあげた版画が展示されています。その昆虫好きが功を奏して空想上の昆虫をこしらえてしまいました。それが「でんぐりでんぐり」です。

作品の周りに書き込まれた文字はこの生物の生態や特徴が記されているそうです。他の作品にも登場しています。また後日別の記事でこの生物については書くことにします。


天才エッシャーの全貌とまでは行かずとも、多くの知らない点や新たな側面を見出すことのできる展覧会です。Bunkamuraでは数年前にも「エッシャー展」を開催しましたが、それとは違います。「スーパー」たる所以ここにあり。混雑必至ですが是非。

無料で貸し出してくれる音声ガイドには今回ニンテンドーDSが使われています。使い勝手は…途中から見ませんでした。折角本物が目の前にあるのにゲーム機の液晶画面で会場で見るのもちょっとナンセンスかなと。


「M.C.エッシャー」 M.C.エッシャー
このDVD会場でも販売されていました。ディスクの表に確か「天国と地獄」がプリントされています。これの許可を取るのが大変だったそうです。

おまけその1

エッシャーのあり得ない世界をレゴで作っちゃった人がいます。

こちら(Escher-lego)に他の作品もあります。
よーく見比べてみると面白いですよ〜

おまけその2

誰もが知っているこの作品
「上昇と下降」

これを元に作られた映像があります。「Hallucii」というタイトルの作品です。






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_ ピヨ子日記@INFORMATION - 2006/12/19 18:36

スーパーエッシャー展
に行ってまいりました
@Bunkamuraザ・ミュージアム


オランダの版画家M.C.エッシャー。
だまし絵がとても有名ですよね。
父がエッシャーが好きなので本で見たりしてたけど、
展覧会で見たいなぁって思い立ってGO。

入り口では無料でDSガ