白痴2007/07/15 03:02

ドストエフスキーの原作を黒澤明によって映画化された「白痴」。

亀田欽司(森雅之)は、戦犯容疑に銃殺寸前に釈放されたが、そのショックで白痴になった男。亀田は札幌に向かう船で赤間伝吉(三船敏郎)と名乗る豪傑に出会う。
那須妙子(原節子)は、美しいが影を持つ女性。
大野綾子(久我美子)は、亀田の下宿先の強気だが純粋な娘。

お話は、純真無垢な亀田を中心に、妙子、綾子の2人の女性と、赤間の4人によって繰り広げられる愛憎劇。いつも思うのだが、人の根源にあるものは人が生まれてから変わっていないんだなろうなって思う。

相変わらず、作品の訴えるもの、緊張感に圧倒される。

好きな科白があったので紹介。

綾子が亀田の手紙を家族に見せて、それを見て嘲笑する家族に対しての言葉。
「うそが少しも書いてないから
あんまり正直なことが書いてあるからおかしいのよ」


嘘のない正直な言葉僕は書けているだろうか。

いつからか、何かを疑い、信じることから逃げ出してないだろうか。

正しいものを正しいと貫き通せているだろうか。

純粋な心は人をうつ。美しい。裏のない、なんの打算もない想いは人を動かす。

ただ、相手の幸せを願うこと。それが自分の夢に置き換えられていないだろうか。本当の愛って、夢を託すことじゃないはず。何かを言い訳にして、そこから逃げちゃいけない。

人って、生きれば生きるほど何か大切なものを忘れていくのかもしれない。得たものを守るために。最初は何ももっていやしないのに。怖いんだね。失くすってことは。

本当に大切なもの失くしてるのにも気づかずに。

「あるとっても天気のいい日
そういう輝かしいような日には、
人間ってとても希望に燃えるものですから」


監督:黒澤 明
脚本:黒澤 明、久板 栄二郎
出演:森 雅之、三船 敏郎、原 節子、久我 美子 ほか
配給:松竹