生きる2006/07/30 22:36

黒澤明監督作品の「生きる」をレンタルして観た。レンタルビデオで映画を観るのは久しぶり。この手の作品は、僕は映画館よりも家で見るほうが心置きなく観れる。

「生きる」という意味を再認識させてくれる映画だ。言葉では表現が難しいんだけど、受動的に生きているのと能動的に生きている事の違いのようなものだろうか。

『死』に直面した時、『死』を本気で意識した時、『生』の真意を認識する。(「僕の生きる道」はストーリーがすごく似ている。それを52年に作っていたというのはさすがだ~)

公務員で勤続30年という主人公の設定が、より一層生きながらの死というものを引き立たせる設定なのだろう。今の時代では、どんな会社にもこんな死に体の社員が多いのではないだろうか?(社内ニートとでも言うべきか?)
普通のニートは、家族や社会に保護されているのと同様に、社内ニートは会社に保護されているのだろう。

「生きる」ではたまたま舞台設定が、会社・仕事だったけど、僕は「生きる」目的は人それぞれであり、それを見つけて真剣に生きる、それで十分だと思う。

人間はそう簡単には変わらない...哀しいけどこれが現実。でも、だからこそ、意思の力を持って生きていかなければいけない。辛いし、苦しい、でも、それでも、それ以上に幸せを得る事ができると思う。

主人公の渡邊勘治(志村喬)と、若い女性職員の小田切とよ(小田切みき) の対比、さらに、息子光男(金子信雄)との関係、小説家(伊藤雄之助)との出会いによる変化、人と人の関係によって起こる心の動きと、本当の「生きる」目的を見つける瞬間(眼光の煌きが素晴しい)。それがすごくリアルに伝わってきた。

夕焼けを見て生きていることを実感するシーンも好き。空はみんなの上に平等に広がっているのにね。そんな当たり前の事に気付く時、それも『生』を実感しないと来ないのかもしれない。

主人公が命がけで作り上げたものは、最終的には子を思う親の心、それが彼の「生きる」目的だったのではないかと僕は感じた。

言葉だけでは伝えられないもの。でも、本気の想いは必ず伝わる。人を動かす。心を動かす。だから、今できること、やるべきこと、それを真剣に、自分を信じて実行していくのみ。


監督:黒澤 明
脚本:黒澤 明、橋本 忍、小国 英雄
音楽:早坂 文雄
出演:志村 喬、小田切 みき、浦辺 粂子、左 卜全